日本のケベック研究
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25 ————————————————————————————————————————————————————————————————————————————- 飯笹佐代子の主要業績(多文化社会研究関連): 論文 ・「〈ケベック価値憲章〉をめぐる論争」『ケベック研究』第6号、2014年、pp.30-50。 ・「多文化社会ケベック、共存への模索-「妥当なる調整」をめぐる論争」『ケベック 研究』創刊号、2009年、pp.62-74。ほか 単著 ・『シティズンシップと多文化国家―オーストラリアから読み解く』日本経済評論社、2007年。 共著・分担執筆 ・『移動という経験-日本における「移民」研究の課題』(伊豫谷登士翁編)有信堂、2013年。 ・『カナダを旅する38章』(飯野正子・竹中豊編)明石書店、2012年。 ・『ケベックを知るための54章』(小畑精和・竹中豊編)明石書店、2009年。ほか 翻訳 ・共同翻訳:G.ブシャール&C.テイラー編『多文化社会ケベックの挑戦』明石書店、2011年。ほか インタビュー要旨 1.まず簡単に自己紹介いただき、これまでやられてきたご研究の主要テーマは何かお話しください 現在、東北文化学園大学(仙台)の総合政策学部で教員をしております、飯笹佐代子と申します。人の移動や多文化社会の動向に関心があり、シティズンシップや多文化主義、インターカルチュラリズムという概念に着目しながら、多文化社会における共生の理念や諸政策の研究を行っています。また、青山学院大学国際交流共同研究センター(同大学と国際交流基金が共同運営する研究機関)では、3年前より客員研究員として、グローバルな観点から多文化共生の研究プロジェクトを進めております。その一環として、2012年12月にインターカルチュラリズムをテーマに開催したシンポジウムでは、ケベック州政府在日事務所の協力をいただき、ジェラール・ブシャール ケベック大学シクチミ校教授を基調講演者としてお招きすることができました。 2.現在のご研究の具体的なテーマと結論についてご説明いただけますか。 これまで主としてオーストラリアやカナダを対象に多文化社会の動向を研究する過程で、特に注目してきたのがケベックの「インターカルチュラリズム(interculturalisme)」という考え方です。ケベックといえば日本では一般的に分離主義運動のイメージが強く、多文化社会の研究対象として注目されることは、カナダ英語圏に比べて少なかったといえます。しかし実際には、ケベックの取り組みは多文化共生をめぐる興味深い事例の宝庫といっても過言ではありません。私は、その中から日本社会にとって、多くの貴重な示唆を引き出せるのではないかと考えています。今はまだ研究の結論を申し上げる段階にはなく、目下、「妥当なる調整」や『ブシャール=テイラー報告』、「ケベック価値憲章」をめぐる論争などを手がかりに、多文化社会ケベックの現状をその独自の社会的、思想的文脈に留意しつつ、より理解することに努めています。 3.今後のご研究の課題や抱負についてお聞かせください。 現在の研究をケベックの事例研究に留めずに、ケベックやカナダの文脈を超えたグローバルな文脈から捉え直していきたいと考えています。ケベックの事例がいかなる今日的意義を持ち得るのか、その限界と可能性とは何か、また欧米を中心に多文化主義批判が精鋭化するなかで、「インターカルチュラリズム」という考え方が、それを超える多文化共生の理念となり得るのかについて考察を試み、多文化社会研究に新たな視点を提示できればと思っています。

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