日本のケベック研究
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9 関 未玲の主要業績: 主要論文・著書 「キム・チュイの『小川』における消去の美学」、in ACEQインターナショナル学会誌『ケベック研 究』、第7号、ソウル、2013 『世界における創造する女性辞典』(共著)、女性出版社、パリ、2013 「21世紀の展望と他者論」、in 『立教大学ランゲージセンター紀要』、第29号、東京、2013 インタビュー要旨 1.まず簡単に自己紹介いただき、これまでやられてきたご研究の主要テーマは何かお話しください 関未玲と申します。現在明治大学にて非常勤講師をしており、2012年よりAJEQにて理事を務めさせていただいております。これまでマルグリット・デュラスの作品における他者性の問題や共同体のテーマについて研究して参りましたが、そのようななかでデュラスと世代は異なりますが同じヴェトナム出身で、間文化に対する問題意識の強いケベックで生活を送りながら、フランス語で作品を発表している女性作家キム・チュイの小説に興味を持つようになりました。 2.現在のご研究の具体的なテーマと結論についてご説明いただけますか。 キム・チュイとデュラスには、それぞれ生地ヴェトナムを扱った作品があります。そこで描かれるヴェトナムは、もちろん独自の社会、歴史、文化を持った国として描かれていますが、オリエンタリスムを喚起するようなレトリックは一切排除され、人間の普遍的な感情に基づいて再構築された生きるための場所として描かれているように思います。こういった視点は、ケベックのような共同体への意識に常に敏感ならざるを得ない生活環境においてこそ、生まれ得たと言えるのではないかと考えております。 3.今後のご研究の課題や抱負についてお聞かせください。 フランス語で作家活動を続けるキム・チュイもデュラスも、アジアと西欧という二重の文化圏においてフランス語を相対化するような経験を得たことが、言語活動に大きな影響を与えているように感じられます。描かれる世界はもちろん独自の社会でありながら、こういった特殊性や個性がむしろ無化されるような別のスペクトルが働いているのではないかと思っています。差異を周辺化するこのような感性は、特に現在の作家には多くみられる傾向にありますが、これが私たちの置かれた21世紀の共同体の思考と、どのように関係しているのか、そのあたりについてさらに詳しく考えてゆきたいと思っております。 -------------------------------------------------------------------------------

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